日本式テクニカルサポート

American Express Internationalが実施した調査によると、50%以上の日本の顧客は、カスタマーサービスが悪いときに製品やサービスを変えます。日本の顧客は、他の国の顧客よりも、カスタマーサービスによって引き続き使うかを決める割り合いが高いことがわかります。

“サービスが悪かったら、他を使う”

  • 日本: 56%
  • イギリス: 37%
  • シンガポール: 33%
  • カナダ: 32%
  • アメリカ: 32%
  • イタリア: 32%
  • インド: 31%
  • メキシコ: 30%
  • 香港: 23%

日本には「お客様は神様」という言葉があり、ビジネスで顧客第一主義(カスタマーファースト)が重視されており、顧客も高い品質のサポートを期待しています。この主義と他者に配慮する文化が、高品質のテクニカルサポートの元になっています。他国のサポートと比較すると、日本のサポートはより高品質でカスタマーファーストを実践できています。

ITサポートの記事に書いた通り、一般的に顧客はサポートの品質によって製品やサービスを継続して使うかを決めるという統計結果がでています。素晴らしいカスタマーエクスペリエンスを提供できる日本式のテクニカルサポートは、ビジネス拡大に最適ですが、日本式のサポートは、顧客側にとってメリットが多いサポートスタイルですが、サポート側にとって負担が大きいので課題があります。

日本式のテクニカルサポートの特徴

顧客第一主義

テクニカルサポートの研修では、顧客が求める高い品質のサポートができるように適切な文章や調査方法などをしっかりと教育します。この研修を通して、サポートメンバーはカスタマーファーストを意識して対応できようになり、顧客のニーズにあった高品質のサポートが実現できます。

シームレスなサポート

日本式サポートでは、十分な引き継ぎによるシームレスなサポートを実現しています。サポートレベルの変更や次のシフトに変わる時、サポート対応者が変わります。この時、問い合わせの詳細、目的、期限、影響、これまでの回答を含めた状況などについて時間をかけた引き継ぎが行われます。この引き継ぎによって、顧客が再度説明することなく、元の対応者と同じように引き続きサポート対応が行われることになります。

アメリカのケースでは、この引き継ぎが十分でないので、サポート対応者変更により、顧客が再度問い合わせの説明をしたり、これまでの回答を説明することが多くあり、顧客がストレスを強く感じる原因の一つです。

原因報告

日本企業が顧客の場合、システムやサービスには複数の企業が関わっていることが多いので、どの企業の担当者の作業に問題があったか確認が必要になります。再発防止と責任の所在の特定のため、原因の特定が強く求められます。このため、すばやい問題の解決の他に、原因について詳細レポートが必要です。このレポートは、内部動作など製品やサービスの開発者レベルの知識が必要となることが多くあります。

顧客の技術レベルに合わせたサポート

ほとんどの日本企業の顧客では、研修を受けさせるため、技術系の専攻でない人もエンジニアとして働けるようになっています。このため、日本企業顧客のエンジニアの技術レベルは様々で、テクニカルサポート側は顧客企業のエンジニアの技術レベルに合わせた回答をだします。技術にあわせて、わかりやすく伝えるコミュニケーション能力が必要になります。

海外では、クライアント企業のエンジニアはコンピュータサイエンス関連学部を卒業した人なので、日本特有の状況です。

日本式サポートの課題

日本企業の顧客が求めるサポートレベルは高いので、テクニカルサポート側の負担が大きくなる傾向があります。テクニカルサポートグループの運営は、タスクの負担をコントロールすることが重要です。

サポート側のストレス

日本式テクニカルサポートでは、Q1とQ3(ITサポートの効率的なリソース管理参照)の時間リソースが多く使われるため、バーンアウトやストレスが高く、離職率も高い職業です。

サポート側の時間リソース

顧客優先のサポートは、レポート、分析、引き継ぎにより多くリソースが使われるため、サポート側の負担が大きくなります。離職率が高いので、入れ替わりが多く、その都度サポートの新メンバーの教育にも時間が使われます。サポートのレベルによりますが、レベル3サポートでは、教育に約3ヶ月ほど時間が費やされます。

ベストサポート

日本式の顧客第一主義のサポートは、高品質でお客様のニーズにあったサポートです。お客様側からはベストのスタイルですが、サポート側は自グループのリソースをコントロールする必要があります。GoogleやAmazonは、チュートリアルやナレッジベースなどのセルフサポートの仕組みと自動化を実現してリソースコントロールに成功している例です。

ローカライゼーション

海外と日本のテクニカルサポートのローカライゼーションは、これら企業文化の違いと求められるサポートスタイルを考慮してすすめることが重要です。「ITサポート」の記事に書いた通り、顧客はサポートの品質によって製品やサービスを継続して使うかを決めるという統計結果がでています。グローバルビジネスでも、高品質のサポートを保ちつつサポートグループのリソースをコントロールする工夫が必要です。これは、ローカライゼーションテクノロジーで実装でき、ニューラル機械翻訳やターミノロジーの実装やニーズに合うローカライゼーションワークフロー実装により、ビジネスのグローバル化は効率的に行なえます。

参考

“Why Japan’s Customer Service Is the Best in the World.” NextShark, 23 June 2017, nextshark.com/japans-customer-service-best-world/.

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